編集:さて「旬感・少女美」も今回で3回目となりました。
今回も前回のモデル椎名ももさんと同じ現役の女子高生モデル、河合まゆさんです。
女子高生モデルさんが続くわけですが、今回の河合まゆさん起用の理由をお聞かせください。

野下:特に高校生にこだわっているのではなく、「今が旬」ということと「季節を写し込む」ということがこの企画のテーマで、そのコンセプトを忠実に求めていったときに河合まゆさんとなりました。
また今までは季節的にも「外ロケ」が比較的組みやすい時期でしたが、そろそろロケが厳しい時期ともなる。

そこでインドアでのスタジオ撮影ということも考え、季節感ということだけではないアプローチでキャスティングをさせていただきました。

編集:実際、今回本誌に掲載されている写真はスタジオ撮影の時のものがありますよね。

野下:今回の河合まゆさん。
彼女の印象ってきっと会ったことのある人ならみなさんならある程度共感してもらえると思うんだけど、一言で言うと「爽やか」「ピュア」そして「中性的」だと思うんですよね。(編集、大いに頷く)もっと言うと色がない。

編集:色がないというのはどういうことですか?

野下:つまり撮り手である私に「邪念」や「妄想」が湧いてこないんです。もちろんそれは良い意味での彼女の個性。
無色透明。それは何もないという事ではなく、無色透明というはっきりとした色(個性)なんです。
水に例えると((笑))味のない水ではなく「おいしい水」。
余計な雑味や匂いといったものがないので、かえって撮り手である私自身が試されているようにすら感じます。

編集:なるほど。
確かにマネージャーさんからも「どこに連れて行ってもピュアですね、と褒められる」と聞いていますし、実際に私も彼女の清潔感、中性的な透明感に引き込まれましたよ。

野下:中性的、というのも決して男の子っぽいとか女の子らしくないとかいうニュアンスではない。

編集:そうそう、そうなんです。すっごく美形ですし。

野下:でもニュートラル。性別がニュートラルな印象なんですよね。実はかつて同じことを感じたモデルさんがいた。
昭和の大物タレントとしてブレイクした(編集注:名前は伏せます)方ですが、その方をまゆちゃんと同じ年齢の頃撮影した時も同じ印象でした。まさに時空を超えた体験。今回の撮影を通じてそんなフラッシュバックを体験しました。

編集:そんな河合まゆさんですが、今回は公園でのロケと室内でのスタジオ撮影というふたつの異なる撮影環境で作品作りをされたんですね?

野下:外ロケでは主に季節を感じながらまゆちゃんの清々しいありのままを撮りたかった。中学生の時にずっとテニス部に所属していたという彼女はやはりアウトドアが合います。当日は晩秋にふさわしい紺碧の空。赤や黄色に色づいた木々にまゆちゃんの健康的な(笑)顔がよく映えました。
一方で室内撮影を組んだ理由。 一つは寒さの問題。真冬ともなれば完全防寒、それこそ心も身体も準備をして撮影に臨みますが、この時期の撮影はそ の準備が難しい。

厚着をしてしまうと季節感を損ねるし、モデルさんも体力的に厳しくなる。当然表情も冴えなくなる。 経験的にこの時期の外ロケの難しさを承知していたので、後半は室内でゆっくり撮影しようと初めから決めていました。 その方が外ロケと違ってゆっくりと時間をかけて撮影に専念できますしね。
もう一つ室内ロケにした理由。実はその二つ目の理由も含めてまゆちゃんをキャスティングしました。

編集:そのスタジオロケの理由とは?

野下:まゆちゃんのモデルとしての魅力は先ほどから述べているように彼女の透明度、中性感、そういったものです。
これは実は誰が撮影しても可愛く撮れるということでもあり、もっと言うならある程度高いクオリティで「美少女写真」が予定調和的に撮れてしまう、ということに他ならないんです。

編集:少女を撮りなれていない人でも、ということですね。

野下:そうです。河合まゆちゃんを可愛く撮ることは誰にでもできてしまう。そういうモデルさんだと思います。

編集:なるほど。

野下:そこでマネージャーさんとその点について議論を重ねました。マネージャーさんとしても「それではつまらない」ということになる。
議論を重ね、彼女をどう撮影すれば視点の違う「旬」が撮れるのか?導いた結論が「絵作りをしよう」でした。

編集:絵作りとはスタジオでの照明ワークや背景やメイクなどの作り込みということですね?

野下:その通りです。無色透明のまゆちゃんだからこそ、色をつけちゃえと。(笑)

編集:確かにバックペーパーもチャレンジングな色を使っていましたね。

野下:テーマは昭和時代のアイドルグラビアです。

編集:ほう、なるほど!

野下:当時のアイドルは周囲の大人たちがそれこそやっきになって色をつけ、濃く染めていた。
良くも悪くもアイドルは偶像、虚構、我々一般人とは違う存在。当時のアイドル写真はまさにそういう絵作りをしていることが多かったように感じます。
今のアイドル写真と言えば当企画もそうですがモデルさん本人の素の部分にフォーカスし、よりナチュラルに、より素顔に近いものが求められている場合が多い。
でも今回のまゆちゃんはそういう撮り方一辺倒だとありふれた現代のアイドルフォトとして埋没してしまうのではないか?
そういう観点からあえてメイクも含めて「色を付ける」ことにしたんです。もちろん奇をてらうという意味ではありません。

編集:そういう深い考えがあったんですね。

野下:もちろんアイディアありきという事ではありません。出発点は「今の河合まゆちゃんをどう撮るか」これ一点。
そこから最終的に導かれた撮影の方法論としてアイディアが生まれ、撮影を組んでいったんです。これは今までも、そしてこれからも同じです。それこそが「旬感・少女美」のコンセプトであり、ゆるぎない立脚点です。

編集:なるほど。ありがとうございます!

編集:さてそれでは仕上がった作品についてお伺いしたいと思います。今回は単焦点レンズを使って撮影されたと聞いているのですが?

野下:そうですね。いわゆる「名珠」と呼ばれるものを使っています。レンズの特性に逃げたと言いましょうか、いや、レンズの特性を活かしたんですね。(笑)

編集:ズームで距離をとって撮影した感じですね?

野下:単焦点レンズは綺麗なボケ味という妙味がある。古典的な見せ方かもしれませんが、やはり王道。

アイドル的なモデルさんの可愛らしさを魅せるとき、やはりそうなるんだと思います。それとメイクさんに無理を言ってかなりメイクには凝ったつもりです。
あまり派手に昭和アイドルを演出するつもりはありませんでしたが、それとなく懐かしさと言いましょうか、現代にはない面白さをメイクによって表現しています。

編集:今までの2作品とはアプローチの違う、とても見ごたえのある作品だと感じました(^^)

野下:ありがとうございます。

編集:では最後に今回の撮影について感想をお願いします。

野下:マネージャーさんとまゆちゃんについていろいろと話をしている時に「河合まゆは今、旬ですか?」と聞かれました。(笑)

編集:マネージャーさん!(笑)

野下:もちろんです、と。
でもその時に「2年前も旬を感じました」とお伝えしました。今もその「旬」は続いていると思いますが。河合まゆちゃんの究極的な魅力。それは「奥行きが見えてこない」ことだと撮影を終えて実感しました。
個人的な感想、もしくは希望、願望としてですが、2,3年後にまゆちゃんにもっともっとすごい「旬」が訪れた時にもう一度撮影をしてみたい。彼女の透明感と向き合うと撮り手として「自分自身にまだ何かがあるのか?それとももう何もないのか?」という事を考え感じてしまう。
もっと何か彼女から引き出せるのではないか?自分が気が付いていない、見えていない魅力があるのではないか?を自問してしまいます。だからこそまたちょっと成長し、変化した彼女を撮ってみたい。どのモデルさんにも感じることですが、まゆちゃんにはそれを強く感じました。
撮り手としてはとても手強い?相手なのだと思います。(笑)それだけ魅力のある、潜在力の堅いモデルさんという事に他なりませんが(^^)

編集:ありがとうございました!寒い中、本当に撮影お疲れ様でした!

野下:ありがとうございました。次回はなんとモデルさんを二人起用した豪華なスキーリゾートソケです。お楽しみに(^^)

編集:楽しみに新作をお待ちしております。読者のみなさんもお楽しみに!